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dim.

日曜日のように過ごせる美容室

美容室は少し苦手だ。

鏡の前に座ると、なんとなく緊張する。

 

整えられた空間。隙のない接客。それが悪いわけじゃない。

ただ、少し肩に力が入る。

 

富山市八人町にある「dim.」は、そんな美容室のイメージとは少し違っていた。

 

古い木の建具。土間。庭の見える窓。初めて訪れたのに、どこか落ち着く。

話を聞いてみると、その理由は店主自身にあった。

|まちなかで店をやる

店主のbecchさん(浦辺さん)は魚津市生まれ。

美容学校までは富山で過ごし、その後は関西で約8年間働いた。

 

いつかは自分の店を持ちたい。その気持ちはずっとあったという。

富山を離れたのも、どこか“修行に行く”ような感覚だった。

 

「いつか戻ってくるとは思っていました」

 

独立を考えたとき、まず決めていたのは“まちなか”で店をやることだった。

 

美容学校時代から付き合いのある服屋。馴染みの飲食店。

街の中で人が行き来する関係。

dim.に来たお客さんが、そのあと服屋へ行く。あるいはご飯を食べに行く。

そんなふうに街を回遊するきっかけになる場所を作りたかった。

|外観を見て決まった

古民家にこだわっていたわけではない。

探していたのは、自分の思い描く空間に合う場所だった。

 

コンクリート打ちっ放しの物件も見た。スケルトン物件も見た。

なかなか決まらなかった。

そんな時、大工さんと繋がりのある不動産屋さんから一つの物件を紹介される。

 

「美容室には向いていないかもしれないけど・・・」

 

そう言われて案内されたのが、この建物だった。

外観を見た瞬間に決まったという。

 

「いや、ここでしょ!って思いました」

|つくるのではなく、残し、活かす

もともとは店舗(酒屋)兼住宅として使われていた建物。

和室があり、廊下があり、庭があった。

 

今の開放的な空間は、壁を取り払い、天井を抜いて生まれている。

けれど、何かを付け加えたというよりは、建物が持っていた魅力を引き出したと言った方が近い。

 

庭、柱、土間・・・残したものの多くが、この空気感を作っている。

カウンターも、もともと酒屋で使われていたものを再利用している。

 

「せっかくなら、あるものを使った方がかっこいいなと思って」

 

髪を切りながら庭を眺める。

そんな美容室は、あまり多くない。

ほぼそのままの状態で残した庭。空間の抜け感をさらに強くしている。

|dim.という名前

店名の「dim.」には、いくつかの意味が重なっている。

 

もともとはフランス語の「dimanche」。日曜日という意味だ。

becchさんが、かつてフリーの美容師として使っていた言葉。

 

日曜日は心地いい。けれど、どこか少しだけ切なさもある。

休みが終わる寂しさ。また一週間が始まる感覚。その曖昧さが面白いと思った。

 

そしてもう一つ。

 

dim.には「Do it myself」の意味も込められている。

美容室で仕上げた時だけ綺麗なのではなく、自宅でも再現できる髪型。

特別な一日ではなく、日常の中で続いていくこと。

それもbecchさんが大切にしていることだった。

 

最後に、この空間へのこだわりを導き出した「dimension(次元)」。

|美容室らしくない美容室

「まるべく美容室って感じじゃない方がいいと思っていて」

 

それはbecchさん自身が、美容室に苦手意識を持っていたからでもある。

緊張する。少し身構えてしまう。

だからdim.は、できるだけそうならない場所を目指した。

 

土間があり、雑貨が並び、庭が見える。

初めて来た人からは、雑貨屋やカフェに見えることもあるという。

実際、外国人観光客がふらりと入ってくることもある。

美容室としては、少し珍しいかもしれない。

けれど、それがdim.らしさでもある。

アンティークな家具等で構成された待合。おしゃれな友人の家に来たような感覚になる。

|少しずつ見えてきたこと

オープンから5年。

最初はもっと若い世代が中心になると思っていた。

けれど実際に集まったのは、少し落ち着いた人たちだった。

 

おしゃれが好きな人。家族連れ。近所の人。そして子どもたち。

想像とは少し違った。でも、今振り返ると自然な流れだったようにも思う。

 

「そうなるよね、という感じです」

 

無理をしなくなった。できないことはできないと言うようになった。

少しずつ、自分たちの場所になっていった。

|これから

今すぐ大きく変えたいことはない。

けれど、土間のスペースを活かして雑貨やコーヒーを提供することには興味がある。

もっと街に開いた場所になるかもしれない。

 

ただ、その時もきっと急がない。

dim.らしいペースで進んでいくのだと思う。

この場所がアップデートされるかと思うと、それだけでワクワクする。

編集後記

私も美容室が少し苦手だった。だからdim.の空気感は本当に心地良い。

取材を終えて決めたことがある。

残り少ない髪はdim.で切ろう。そして街に出よう。

 

 

-- information --

■dim.

住所 富山県富山市八人町1-13  400000 1F

OPEN 10:00-19:00

定休日 水曜日